ピープルマネジメント
1on1・ピープルマネジメント支援クラウドシステム「Kakeai」を開発・運営する株式会社KAKEAIが、顧客先で実施した実証実験の結果レポートがとても示唆に富んでいます。
上司と部下の関係にある約230組を対象に、従来通りの⽅法で1on1を実施してもらうペアと、サポートシステムを活用したペアとで、売上や離職率にどのような違いが生まれるかを探った実験です。
この二つの成果指標について、比較対照グループ間で明らかに違いがあり、その違いに大きく貢献していたと考えられる要素5つが紹介されています。
自己決定を担保する
この5つの要素のうち、特に注目したいのは、「チームメンバーが1on1で話したいこと」と、「マネージャーにどんな対応を望むか」を、事前にマネージャーに伝えていたというアプローチです。
対人支援において最も重要な「本人の自己決定」を担保する手法で、ピープルマネジメントの基本とも言えます。
ライアンとデシの自己決定理論でも説明されているように、自己決定の度合いが高ければ高いほど、動機づけの質が高くなるからです。
まず一つ目の、1on1で話したいトピックについてですが、「業績の進捗や進め方、人間関係、心身の状態、今後のキャリア、スキルや力の向上、プライベート、会社や部署の方針、その他」といった選択肢が用意されているとのこと。
これだけで、1on1が改善されるというのは、目から鱗に聞こえるかもしれませんが、チームメンバーは、事前にトピックを選ぶことで、1on1の面談が自分ゴトになります。
主体性を大切にしたいから「何でもやっていいよ」、「何を言ってもいいよ」と言われても、とっかかりがなくて困ってしまう経験は、誰にもあります。
また、マネージャーも事前に面談の方向性を把握することで、対話のマネジメントがしやすくなるでしょう。
マネージャーにして欲しい対応をリクエスト
二つ目の、1on1でマネージャーにして欲しい対応には、「アドバイスが欲しい、⼀緒に考えてほしい、話を聞いてほしい、意見を聞きたい、報告したい、その他」といった選択肢が用意されているそうです。
ここでも重要なのは、支援相手の自己決定の尊重です。
「話を聞いてほしい」というリクエストは、マネージャーの傾聴力が試されます。
自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したいことを聴くというのは簡単ではありません。
さえぎらず、最後まで聞ききることや、相手が話に詰まったときに、じっくりと待つことも大切です。
アドバイスが欲しいというリクエストの場合も、まず話を聴くというフェーズが必要です。
アドバイスをする前後に、一緒に考えてみる時間があってもいいでしょう。
アドバイスする際に注意したいのは、相手がアドバイスをそのまま受け取らなくてもいいということをお互いに合意しておくことです。
ひと手間・ひと呼吸
事前に本人から伝えられていた希望が「話を聴いて欲しい」だった時、原則は聴くことに徹しても、途中でアドバイスやティーチングを提供した方が前に進むと感じたら、マネージャーはどうすればいいでしょうか。
そういう時は、相手の意向を確認するというひと手間が大切です。
勢いで自分の経験談を話し始めるのではなく、相手が十分に話しきったというタイミングを待ち、そして、ひと言、丁寧に断りを入れます。
例えば、「今日は、話を聴いて欲しいという希望だったから、アドバイスはしないつもりでいたのだけど、もしよかったら、同じ課題で悩んでいた人の事例が参考になるかもしれないと思うのだけど、どうかなあ」と相手に問いかけます。
相手が「それ聞かせてください」と言うか、「その事例を聞いても、今の自分にはハードルが高そうなので、また別の時にしてもいいですか」「今日は気持ちの整理をしたかったので、もう少し話を聴いて欲しいのですが」といった反応になるか、話してみないとわからないので、その反応を尊重しましょう。
目標達成志向や課題解決志向のマネージャーは、ついつい解決を急いで自分のペースでアドバイスしがちなので、ひと呼吸置くことも大切です。
相手が自ら、解決に向かえる状況になっているかどうかを確認し、もし、アドバイスすることになった場合も、「~ということだったけど、何か参考になるところがありましたか/どう思いますか」と、必ず、相手の考えや意見を聞くこともお忘れなく。
対人支援手法の使い分け
優れたマネージャーは、チームメンバーが抱える課題の特性や、本人の経験値や能力によって、ティーチング、アドバイス、コーチング、フィードバックなどの対人支援の手法を使い分けています。
また、マネージャーがコーチングスキルを学んでいくと、アドバイスやティーチングはしない方がいいのではと揺れることもあるかもしれません。
アドバイスを伝えたら、そのアドバイスについての相手の考えや意見を聞き、相手が自分で考える機会を作っていくとか、アドバイスを活かしたいという意思を持っている相手には、具体的にどのように計画するのかといったアクションを促す支援につなげることもできます。
とは言え、わかっていても、実際には自分の得意なスタイルが前面に出てしまいがちなので、自分のスタイルのクセを客観的に把握し、意識的に使い分けていくことが必要です。
こうした対人支援手法の使い分けは、トレーニングで獲得し、磨くことができるスキルです。
相手の自己決定を尊重しながら、1on1の時間を成長機会に変えることができれば、自ずとチームの成果につながっていくはずです。
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