ピープルマネジメント

中間管理職 受難の時代?

罰ゲーム化、そして、無理ゲー?

中間管理職(ミドルマネージャー、ラインマネージャー)の危機を伝える調査や論文、書籍が次々と発表されています。

2024年2月に「罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法(小林 祐児 著)」が発刊され、翌月には「中間管理職 無理ゲー完全攻略法(中谷一郎 著)」と続きました。
どちらも「罰ゲーム化」「無理ゲー」と辛さが漂うタイトルで、現場の悲壮感を伝えています。

「罰ゲーム化する管理職」の著者の小林さんは、パーソル総合研究所の上席主任研究員を務められ、同研究所が2019年に実施した「中間管理職の就業負担に関する定量調査」でも、中間管理職の疲弊ぶりとリソース不足を報告されていました。
この報告書で衝撃的だったのは、働き方改革が進んでいる企業の管理職ほど、そうでない企業の管理職よりも、業務過重が増えているというデータです。


働き方改革関連法、パワハラ防止法、コロナ禍

2019年4月、働き方改革の時間外労働上限規制が大企業から始まり、20年4月には中小企業に対象が広がったと同時に、コロナで緊急事態宣言が出されました。
管理職の方々はチームメンバーのケアと顧客対応、突然の売上減対応などに追われました。

さらに、2020年6月からパワハラ防止法が、大企業を対象に、22年4月からは中小企業対象に施行され、いよいよ24年4月、働き方改革関連法の仕上げとも言える、建設業・運送業にも時間外労働上限規制が課されました。
こうした社会環境の変化への対応に追われる中、組織のフラット化などを名目に管理職の数の削減なども生じています。

23年9月に発表されたリクルートマネジメントソリューションズ社のマネジメント意識調査では、人事担当者と管理者層が考える企業組織課題として、「ミドルマネジメント層の過重負担」が調査開始以降初めて1位になり、注目を集めました。

グローバルな企業でも中間管理職は疲弊している

欧米の企業でもミドルマネージャーの疲弊は今に始まったことではないようです。2017年3月のハーバードビジネスレビュー(HBR)オンラインに掲載された記事のタイトルは「Why Being a Middle Manager is so Exhausting ミドルマネージャーはなぜそんなに疲弊するのか」でした。

HBRの23年7/8月号には、「Don’t Eliminate Your Middle Managers中間管理職の人員削減を軽々しく行うべきではない」と言う論文が掲載されました。


この論文を執筆したのはマッキンゼーの3人のコンサルタントで、同じ時期に「Power to the Middle: Why Managers Hold the Keys to The Future of Work  中間管理職にパワーを:なぜ中間管理職が『働き方の未来』の鍵を握っているのか」という本を出版しています。


この本では、変化が急速で激しいからこそ、経営と現場をつなぐ中間管理職の役割が重要だと提唱しています。

外からの環境変化と内側の働く人の変化

ミドルマネージャーは、経営と現場をつなぐ組織の血管のような役割を担っています。

血管が衰えたり、詰まってしまえば、身体全体もうまく機能しませんし、場合によっては身体の一部が麻痺してしまうかもしれません。
ミドルマネージャーの役割が高度化し、今までになく血管が詰まった状態になる背景には、急速な環境変化があります。

人材確保の厳しさは、採用時点だけではありません。

採用後のエンゲージメント、成長実感、居場所感などの要素が、定着率に大きく影響します。
年上の部下、大きく世代の離れた部下と、関係性をどう築けばいいのか悩んでいるという声をたくさん聴きます。
また、働く場所や勤務時間、契約形態など、働き方の異なるメンバーとのコミュニケーションもかなりの苦労です。

そして、VUCAの時代と言われる今、過去の経験値に頼ることができず、だれも正解がわからない中、マネージャーとしてどのように振る舞えばいいのか などなど悩みは尽きません。

経営層は、働き手不足、働き方改革の推進やテクノロジーへの対応など、社会環境の変化対応に追われ、一方、マネージャー層は、外からの変化対応に加えて、一緒に働く人たちの意識や価値観の多様化、そして働き方の多様化の流れの中で、一人ひとりに応じた対応に追われています。

この時代にミドルマネジメントを担う方々は、これまで従来型のマネジメントで育ってきているのに、ここにきて新たなマネジメントスキルが必要だと言われても、まわりにお手本がいないという状況に直面しているとも言えます。

では、このような状況をどのように乗り越えていけばいいのでしょうか。

そのカギはやはりミドルマネージャーにあります。

ここで、何よりも大切なことは、この重要な役割を担うマネージャーを組織全体で支え、現場のマネージャー任せにしないことなのです。

そして、目先のツールや手法をやみくもに取り入れるのではなく、まず、経営層、人事担当者、そして現場のマネージャー層が、めざすマネジメントのあり方を共有することからです。

これからの対人マネジメントの方向性

ピープルマネジメントアカデミーでは、これからの対人マネジメントの方向性を考えるにあたっての視点を3つ提案しています。

まず、最初に「人間性を尊重したマネジメント」が人の成長も組織の成長にとっても重要なカギを握っているという理解が大切になってきます。

部下のことを組織の歯車としてしか見ない上司がいる職場では、不幸せを感じる人が多いとか、離職する理由の上位になっていることがさまざまな調査研究で明らかになっています。
ただ、「一人ひとりと向きあい、メンバーの成功のためにサポートするのがマネージャーの役割」と言うのは簡単ですが、限られた時間で実践する難しさもあります。

二つ目は、多様性を活かせないと、組織は成果も出せず、成長できない時代だということ。

人材の多様性だけでなく、働き方も価値観も多様です。
こういうチームをまとめていくには、ひとり一人の価値観に沿った個別化するスキルが必要になってきます。
ストレングスファインダーを実施するギャラップ社の研究によりますと、強みに注目する上司のいる職場は、意欲の高い従業員の割合が61%と高い一方、弱みに注目する上司のいる職場では、意欲の低い従業員と意欲を持とうともしない従業員が合わせて55%だという究結でした。
また、強み・弱みのいずれにも注目せず、上司から関心を持たれていないという場合は、この数値が97%にもなったそうです。

三つ目はVUCAの時代を乗り切る上で欠かせない視点です。

過去のやり方や成功体験があてはまらないことが多々あり、自分たちで考えていくことがますます求められています。まず実践してみてそこから答えを見つけるという「トライ&ラーン」の姿勢をチーム全体に浸透させるアプローチです。「トライアル&エラー」のように「エラー=間違い」という言葉を使うと、チャレンジする気持ちになりにくい人もいます。
言葉が持つ力は大きいので、「ラーン=学習する」として、手に入れたい未来を表現していくことも大切です。

ここまでお話してきたように、現場のマネージャーの負荷が大きい中で、環境変化への対応を担うのもマネージャーだとすると、さらに負荷がかかってしまうように思われるかもしれません。

何よりも大切なことは、経営者層、人事担当者の方々が、マネージャーの役割の重要性を組織として認識し、マネージャーの皆さんがマネジメントのOSをアップデートできるようにサポートしていくことだと思います。


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